1、認知症の定義

・介護保険法第五条の二に「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう」と規定されている
・認知症の症状は、認知機能障害と行動・心理症状(BPSD)が注目されることが多いが、それらにより引き起こされる生活障害こそが重要な症状であり、生活機能の向上を専門としているのがリハ専門職
「HDS -Rの点数が低いから認知症。
ではなく、その人の日常生活に支障が生じているのかを、普段の生活場面でしっかり観察することが重要だと思います。
現にHDS-Rの点数が一桁台でも、日常生活には支障をきたしておらず、穏やかに過ごせている患者さんを目にしたこともあります😌」
2、認知機能、生活機能へのリハビリ

・「認知症疾患診療ガイドライン2017」では、「認知刺激等の認知機能に働きかける非薬物療法や運動療法は、認知症の認知機能障害に対する効果がある」と記載されている。
認知症者への 介入 | 認知機能訓練、認知刺激、運動療法、回想法、ADL訓練、マッサージ、レクリエーション療法など |
・主に認知機能に働きかける代表的介入は、認知機能訓練、認知刺激療法、認知リハがある
介入 | 内容 | 効果のメタ分析 |
認知機能訓練 | 記憶、注意、問題解決等、認知機能の特定の領域に合わせた課題を、誌面やコンピュータを用いて行う | 認知機能向上効果は認めなかった |
認知刺激療法 | リアリティオリエンテーションから発展してきたもの。リアリティオリエンテーションは当日の日付、曜日、季節、場所や天気、人物等を提示しながら伝え、本人の過った認識に由来する行動障害や情動障害を緩和することを目指した手法 | 認知症の人への認知刺激療法の有用性を示しており、非介入群と比して、介入群で認知機能の改善を示し、1ー3ヶ月後のフォローアップ期間も効果を継続していた |
認知リハビリテーション | 個別の目標設定を行い、個人(本人、家族)に対して戦略的に介入する。日常生活に主眼が置かれ、残存機能を活かしながら生活できるよう介入する | 介入技法の統一の困難さもあり、メタ解析には至っていない |
・認知症の人の運動療法のメタ解析では認知機能の改善効果が示されている
・有酸素運動により海馬体積が増えて記憶力が向上するとの報告もある
「認知症だからドリルをやらせましょう、頭を使うことをしましょう。
などと安易に考えがちですが、実際には効果は薄いようで、それなら運動療法の方が効果が実証されているようです。
逆にストレスになる可能性もあるので、課題を進める際には、根拠を持つなど、出す側の責任も必要だと思います☺️」
3、認知症を有するリハビリテーション対象者へのリハビリテーション

・疾患別リハの対象者が認知症を有している場合のリハ(合併症としての認知症)
・日本リハビリテーション病院、施設協会が2013年度に行った調査では、回復期リハ病棟112病棟のリハ利用者の認知症を有する人数は2265例(32.6%)と報告されており、現在はさらに増加していて、認知症を有する人のリハは避けては通れず、対応の工夫が必須
・「認知症の人は指示が通らない」「すぐに指示を忘れる」等とネガティブにとらえるのではなく、認知症があっても指示通り、守られるよう、わかりやすく何度も伝える等と、ポジティブに対応することで、スキルアップにもつながる
・言ってもダメなら書いて見せ、それでもダメなら一緒にやって見せて、指示を伝える
・「手がかかる」とネガティブにとらえないで、認知症者とうまくコミュニケーションが取れるようにスキルアップする
・この技量はどんな患者と対応するときでも役立つと、ポジティブにとらえる
「医療職はリスク管理の観点からか、ついつい患者さんの悪いところや障害ばかりに目が向きがちですが、保たれている機能も必ずあります。
その機能を評価し、生かすために、コミュニーション方法や環境設定を工夫するといったポジティブな思考を忘れないようにしたいですね😌
そして、コミュニケーションは双方向性なので、うまくいかない時には、こちらにも責任があるということも忘れず、患者さんのせいにしないようにしたいです☺️」
4、認知症の人への対応に役立つ脳活性化リハ5原則

①笑顔で接し
②楽しくコミュニケーションをとりながら
③対象者が役割をもち
④互いに褒め合い
⑤失敗を防ぐサポートを原則とする
・認知症の人の場合、リハがその瞬間瞬間で楽しくないと継続が難しい(その瞬間瞬間で報酬が必要)
・丁寧にリハの必要性を説明してもその重要性を理解、保持できない場合もあるため、毎回の動機付けも重要
・脳活性化リハ5原則に従い、対象者が(その瞬間に)求めていることを楽しく笑顔で行い、褒め合うことで報酬系が賦活してドパミンが放出されて意欲が高まる
・扁桃核の働きによって感情への印象が強い記憶は残りやすいため、本人にとって良い印象を残すことが望ましい
・筆者の経験からも、この5原則に従い対応を継続した結果、「良い人」と認識してもらえ、リハの継続につながったことが多くあった
・ポイントは、最初は拒絶されるかもしれないが、好意的なかかわりは相手に伝わり、継続することで関係性が構築できる可能性があるということ(初めから魔法のようにうまくいくわけではない)
・「認知症だからリハは難しい」と即座に判断せず、リハが対象者に届くように(われわれ自身が、対象者の笑顔、機能改善等の後からの報酬を期待して)根気よく、楽しく笑顔のコミュニケーションを継続することが大切
「笑顔でコミュニケーションを図るという基本的なことですが、そのような良い刺激の積み重ねが大切ということですね。
そして、記憶障害により時間軸の連続性が失われ、その瞬間瞬間を必死に生きている認知症者の対応には、特に大切ということです😌」
5、本日のまとめ

1、認知症の定義は「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう」
2、「認知症疾患診療ガイドライン2017」では、「認知刺激等の認知機能に働きかける非薬物療法や運動療法は、認知症の認知機能障害に対する効果がある」と記載されている。
3、日本リハビリテーション病院、施設協会が2013年度に行った調査では、回復期リハ病棟112病棟のリハ利用者の認知症を有する人数は2265例(32.6%)と報告されており、現在はさらに増加していて、認知症を有する人のリハは避けては通れず、対応の工夫が必須
4、脳活性化リハ5原則に従い、対象者が(その瞬間に)求めていることを楽しく笑顔で行い、褒め合うことで報酬系が賦活してドパミンが放出されて意欲が高まる
5、「認知症だからリハは難しい」と即座に判断せず、リハが対象者に届くように(われわれ自身が、対象者の笑顔、機能改善等の後からの報酬を期待して)根気よく、楽しく笑顔のコミュニケーションを継続することが大切
「認知症の患者さんと関わる際に、一つでも思い出して頂けたら幸いです☺️」
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