1.体組成の何が減ったかのを、5level modelに沿って考える

・医学的に有意な体重減少の定義は、体重を減らそうという意図をもたずに、6-12ヶ月の間に5%以上の体重が減った場合を指す
・見た目の印象変化や先月の体重測定値の比較だけに頼っていては見落としやすい
・6~12ヶ月で5%の体重減少は、65歳以上で15-20%、施設入居者では50%を超えると報告されている
・高齢者の体重減少のうち、4分の1は診断がつかないという報告が多い
・自宅生活している高齢者において3年間で5%の体重減少でも有意に死亡率が上昇したという報告がある
・老人ホーム入居者において、体重減少が骨折リスク上昇や健康関連QOLの低下とも関連している
・体重減少は、身体を構成する要素のうち何が減ったかを明確にすることで、鑑別診断が絞り込まれ、特異的な治療法も想起しやすくなる
・包括的なモデルとして5level modelがあり、①原子レベル(酸素、水素、炭素)②分子レベル(水、脂質、蛋白、ミネラル)③細胞レベル(細胞内物質+細胞外液+間質)④組織レベル(骨格筋、脂肪、骨、血液)で分類する。
・フレイル高齢者で考える場合は、④組織レベル(骨格筋、脂肪、骨、血液)で分類する。
・月~年単位で出現した病的な体重減少では(日~週単位の体液増減がないと仮定すれば)、極論すれば筋肉が減ったのか、脂肪が減ったのかの2択で検討すれば十分といえる
「体重減少については、臨床現場でも目にする問題です。
特に老人保健施設など、維持期の患者さんを見る場合に目立つ印象です。
本書にも書いてあるように、原因が様々であり、複合しているので、究明がしにくく、対応策が打ち出しにくいのが難点だと思います。
ですが、まずはそれぞれの医療従事者が知識の幅を広げることで、問題解決の幅も広がっていくと思います。
この問題も、やはり歳だから、で片付けず、まずは多職種で考えていくべきことだと思います。」
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2.体重減少を起こした病態は、栄養素の流れに沿って想起する

①食物が入手できない(経済社会的問題+IADL障害)
②食べたい気持ちにならない(食思不振)
③適切に食べられない(摂食嚥下機能障害)
④食べたものを活用できない(消化排泄障害)
⑤食べた以上に消費される(代謝亢進)
⑥薬剤性
「これは自宅生活されている方などを対象にした場合でも、考えやすいモデルなのかなと思います。
体重減少も安易に考えやすい問題ですが、その後の健康寿命にも密接に関わっていく指標です。
3食しっかり食べましょう。
など短絡的なアドバイスではなく、原因をまずは考えることで、有効な対処に繋がると思います。」
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3.実際の評価、介入は、過度な侵襲を避け、患者のQOL向上につながるように相談する

・4分の1が該当する診断がつかないケースでは、さらなる追加検査を行うよりは、慎重な経過観察を数ヶ月行うことが推奨される
・時間経過による症状変化で縦軸を、家族や介護者からの情報収集や環境評価で横軸を広げることでゆったりと全体像を捉えるスタンスの方が望ましい
・介入はサルコペニアの治療とほぼイコール(基本的には筋肉の減少)
・高齢者の体重減少に対する介入によって生命予後の改善を示せたものはないため、あくまで生活の質、人生の質にフォーカスを当てて体重を増やすためだけに苦行のような日々で人生が終わることがないように注意する
・有害と思われる薬剤を中止する
・特定の専門医へ紹介することは推奨されないが、多職種チームへのコンサルテーションは有用かもしれない
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・望ましい診療姿勢
①生物心理社会的問題を網羅した患者全体像を把握する
(体重減少に関連する疾病や、医師の専門領域だけに視野狭窄しない)
②患者の嗜好、選考を十分に聞き取り、理解したうえでケアに反映させる
(医学的正しさだけを絶対としない)
③治療負担や害、実現可能性も考慮して、個別化されたケアプランに落とし込む
(マニュアル通りにあてはめない)
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「本書は診療医に向けたテキストのようですが、コメディカルなどの医療従事者にもぜひ読んで欲しい内容です。
今回の内容に関しても、診療についてもですが、何より患者さんとの向き合い方について勉強になります。
情報収集の大切さ、QOLに視点を置いた考え方、多職種連携の重要性などは常に医療者は意識すべき内容かと感じました。
特に最後の望ましい診療姿勢については強く共感できると思います。
自分の専門分野だけに固執して考えてしまう。
患者の話を聞かず、医学的な面ばかりで治療方針を選んでしまう。
個別的ではなく、全てマニュアルに当てはめようとする。
など、言語化すると決して行ってはいけないと理解できると思いますが、日々行っていく臨床業務の中で、不意に誤っていることも少ないかもしれませんよね。
自分としては、常に患者の心理面に目を向けられること。
言語的側面だけでなく、表情や行動など、非言語的な側面からも患者さんの気持ちを理解する。
これだけは忘れたくないと思います。
自分が患者さん側になったとき、どんなセラピストに診て欲しいか。
という視点で考えると、自分がどんなセラピストであるべきかが、見えてくるのかもしれません。」
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本日も引用は
でした。
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