1、認知行動理論

・現在の問題を構成する刺激ー反応ー結果の悪循環を把握し、介入していく支援
・ケースフォーミュレーションによって、刺激に対する反応を認知・感情・行動・身体に分けてアセスメントし、悪循環に陥っている状況やメカニズムをクライエントとセラピストで共有する。
・ エビデンスの認められた介入技法の中から、認知・感情・行動・身体のいずれかの反応を変容させる技法を選択、実践することで、悪循環からの脱却を目指す。
・実践は心理面接の場だけでなく、ホームワークと言う形でクライエントの生活場面においても行われる
【認知行動療法で用いられる介入技法のうち、代表的なもの】
・エクスポージャー法(曝露法):不安場面に直接晒し、回避行動を禁じることで、自然に不安が収まる経験を積み、不安場面に慣らしていく方法
・トークンエコノミー法:適応的な行動に対して報酬(代用貨幣:貯めると報酬と交換できる)を与え強化する方法。オペラント条件付けの正の強化の手続きそのもの。
・自己教示訓練:言葉による行動調節機能を用い、クライエントが自分自身に適切な教示を与えることで、治療効果を引き出すこと
・セルフモニタリング:クライエントが自分自身の認知や感情、行動を観察しデータを得て、それらを検討するという一連の流れのことであり、思考記録表や行動記録表などが用いられる。 自分の認知、感情、行動等について観察、報告することにより、自分の認知の歪み、思考の癖、行動の特徴などに目を向ける技法
・認知再構成法:パターン化した自動思考に気づき、自動思考以外の考えを持つことができるように、自動思考の検討を行う方法で、主に思考記録表を用いて自分の自動思考を記録し、自動思考に代わる思考の獲得を目指す
・行動活性化:活動記録表に記入(何時にどのようなことを行ったか)が求められ、その上で個々の活動における達成感と喜び、楽しさ(満足度)をクライエント自身に得点化してもらうことを1週間程度続ける。この得点を参考にしながら、活動量が全体的に増加し、達成感や喜びが高まるように活動スケジュールを設定していく。行動の肯定的な変化に伴って、クライアントの自己評価の向上や適応的な姿勢への変化を目指す。
・マインドフルネス:瞑想によって、今現在の現実をあるがままに知覚し、感情や思考に囚われないようにすることを目指す方法。体内や心で体験されるできごと1つ1つに価値判断や反応をせず、受け入れるような姿勢で意識を傾け、その意識を持続することを指す(アクセプタンス)。マインドフルネス瞑想を続けることにより、色々な出来事をとらわれのない無執着(むしゅうちゃく)の姿勢で体験できるようになっていくと言われている。マインドフルネスの要素を取り入れている療法に弁証法的行動療法やアクセプタンス&コミットメント・セラピーなどがある
・弁証法的行動療法:境界性パーソナリティ障害に的を絞り、自殺類似行動などの衝動的行動を繰り返すクライエントに対する治療技法として開発された。治療では、マインドフルネススキル、対人関係スキル、情動制御スキル、苦痛耐性スキルの4つを身につけるためのトレーニングが実施され、衝動的になってしまう自分を受容しつつ、そんな自分を変えていくことへの動機付けを育み、日常的な場面での行動変容を目指す
・ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー): 「受容」に焦点を当てた認知行動療法の一種。6つの基本原則に基づき、心理的柔軟性の獲得を目指すアプローチ。望ましくない認知や行動の除去や修正ではなく、認知や行動の選択肢を豊かにすることで、柔軟な対応が取れることが重視されている。
【6つの基本原則】
①脱フュージョン: 思考に飲み込まれない。現実と思考の混同から脱する(思考やイメージは現実ではないことを認識する)
②アクセプタンス: 体験を回避せず、あえてそのまま置いておく(不安な感情を受け入れる)
③プロセスとしての自己: 思考する自分を客観的に見つめる。「観察する自己」に意識を向ける
④文脈としての自己:自分が置かれている文脈や環境の「今」に集中する
⑤価値の明確化:自分が生きていこうとする方向や価値を言語化する(明確に・行動指針とする)
⑥コミットした行為:自分の価値にそった行動を、実際にとる
【スキーマ療法】
・ パーソナリティー障害にターゲットを絞った心理療法で、認知行動療法をベースに、様々なアプローチ(アタッチメント理論・ゲシュタルト療法・力動的アプローチなど)を組み合わせて用いる現代的な統合的心理療法の1つ。
・特に境界性パーソナリティ障害など、不安や衝動などの症状を繰り返し、一般的な認知行動療法では症状の治らない人々への治療として用いられている。
・ 理論においては、「愛されたい、有能でありたい、自由に自己表現したい、自由に生きたい、自律的に生きたい」という5つの中核的感情要求を想定し、幼少期からの経験においてこれらが満たされず、傷つきが発生することで、早期不適応スキーマと呼ばれる自己敗北的な感情・認知的パターンが発生するとされる。
・ 早期不適応スキーマは18種類あり、それらは5つのカテゴリーに分けられている。治療ではこれらの不適応スキーマを手放し、治療的再養育法などを用いて、適応的な認知、感情反応を経験できるようにしていく
*公認心理師試験第4回 問54出題
・ ケースフォーミュレーションに基づくクライエントへの心理教育によって、クライエント自身が自分の問題状況を把握し、介入方法をホームワークと言う形で自分自身で実践することによって、自分自身でケアができる状態を目指す。
望ましくない認知や行動の除去こそが目的であると誤解されやすかった認知行動療法の発展として、より柔軟な理解と実践を目指す理論です!
2、人間性アプローチ・クライエント中心療法(来談者中心療法)

・人間の自主性を尊重し、自己実現傾向を引き出していくことを目指す支援
・背景理論に、ロジャースのパーソナリティ理論があり、ロジャースはパーソナリティを自己概念と経験(体験)からなるとした。
自己概念とは、個人の特性や関係についての定型化された知覚と、それに伴う価値を表すもの。意識化することができ、理想自己と言い換えることもできるよ。
それに対して経験(体験)とは、個人が直接的に経験したもので、現実自己と言い換えることもできるよ。
・この2つが重なり合っていない歪曲領域、否認領域は、有機体が重要な経験を意識することを拒否したり歪曲(わいきょく)して意識したりするために、その経験が正確に象徴化されていないとし、この状態が心理的不適応の状態であるとロジャースは考えた。
つまり、 人間の社会的不適応は「自己概念と経験の不一致」が原因とされます。自らの経験を受け入れることで不一致を解消し、経験に基づいた自己概念の構築が可能になることを「自己受容」と呼び、これをセラピーの目標としました
・ロジャースは有機体(人)には、自己概念と経験を一致させていこうとする自己実現傾向があると考えた。
人間性アプローチ(人間性心理学・ヒューマニスティックサイコロジー)の代表的な心理療法が、クライエント中心療法です!クライエント中心療法は、クライエントの自己実現傾向を引き出していくための支援です!
【クライエント中心療法】
「非指示的方法」とも呼ばれます。クライエントの自己実現傾向を引き出すためには、以下のセラピストの3つの態度が必要とされるよ
①純粋性(真実性):セラピスト自身が自己と経験との一致状態にあること
②無条件の肯定的配慮:セラピストがクライエントの体験を無条件に肯定すること(=受容•尊重)
③共感的理解:他人の内的準拠枠を正確に知覚することであり、経験に伴う情動的要素や意味をも知覚すること。
「内的準拠枠」というのは心理学用語で、「内的参照枠」「内的思考の枠組み」とも言います。人それぞれの独自な意味づけの原理のことで、分かりやすく言えば、その人のものの見方、感じ方、考え方のことです。
*クライエント中心療法はカウンセリングの基本だが、「単体での心理療法としての効果は十分に検証できておらず、短期的な効果を見込むものではない」点に注意
クライエント中心療法以外の代表的な人間性アプローチに、フォーカシング・動機付け面接・エモーションフォーカストセラピー(感情焦点化療法)などが挙げられるよ
【フォーカシング】
・ジェンドリンが提唱。気持ちを表す体の感じ(自身の体に起こる、まだ言葉にならない意味の感覚)であるフェルト・センスに注目し、フェルトセンスが言語化されていく過程(フェルトシフト)を重視した
・カウンセリングにおける「体験過程」と「フェルトセンス」がキーワード。
⇨【少し詳しく解説】: 体験過程とは、自身の心に目を向けることによって直接感じられる身体感覚のことであり、それは本来、刻々と変化し流れていくものであるとされる。フォーカシングでは、問題を抱えた個人が自分の体に注意を向け、自身の問題と関わるように感じられる身体的な感覚である「フェルトセンス」が 現れるのを待つ。フェルトセンスが現れたなら、それを象徴する言葉を探す。これを「ハンドル」と呼ぶが、それを糸口として自身の心を体験的に捉え、フェルトセンスをハンドルによって十分に捉えられたと感じること、つまり自分の心を感じられたと言う深い感覚を「フェルトシフト」と呼ぶ。ここに至る一連のプロセスがフォーカシングであり、人々はフォーカシング を通じて体験過程を味わうことができると言うことである
・動機付け面接:クライエントが非協力的で、問題克服に向けた動機付けが低い状態にある時に用いられる面接技法。
・エモーションフォーカストセラピー(情動焦点化療法):クライエント中心療法の共感的関係を基礎としながらも積極的介入技法を取り入れ、クライエントの感情的変容を促進する統合的アプローチ
3、本日の要約まとめ

1、認知行動理論は現在の問題を構成する刺激ー反応ー結果の悪循環を把握し、介入していく支援
2、人間性アプローチは人間の自主性を尊重し、自己実現傾向を引き出していくことを目指す支援
・この記事は赤本 公認心理師国試対策2022 (KS心理学専門書) を用いて要約しています。
・公認心理師受験専用に様々な参考書がありますが、私はこれ1冊を徹底的に使い込むだけでも合格点は目指せると考えています!
・何の参考書を買うか迷った時は、まず赤本 公認心理師国試対策2022 (KS心理学専門書) がおすすめです😌
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