1.老嚥とは老人性嚥下機能低下を表す概念
・高齢者の中には障害には至らない嚥下機能低下状態が多くみられる
・これらにはサルコペニアが関連していると考えられ、進行することにより摂食嚥下障害に至ると考えられる
・老嚥は食形態の制限はほとんど必要なく通常の食事は可能
・老嚥は餅やパン、厚い肉など咀嚼嚥下運動に大きな負担となる食形態や、水分と固形物の混在した二相性食品などでは誤嚥リスクが高くなったり、スムーズな咀嚼嚥下運動ができなくなるような状態
・摂食嚥下障害は、とろみをつけた食品や均質な一相性食品、柔らかさを適正に調整するなど一定の食形態しか比較的安全に嚥下できない、もしくは嚥下できない状態

画像引用:Interview オピニオンを聞く 西尾 正輝 氏Geriatric Medicine Vol.55 No.3 2017-3 第10回 フレイル・サルコペニアと摂www.lifesci.co.jp
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「老嚥は入院中や入所中の患者さんでもよく見受けられます。
常食を食べている患者さんが、麺類だとむせる。
肉ばかりを残すようになる。
など、特定の食品で徐々に食べにくさを生じることがあります。
このような場合、患者さん本人からの自発的な訴えというのは、ほとんどなく、スタッフが発見するということが多いイメージです。
常食を食べている、もしくは食べていた方の場合は、スタッフの目も離れやすく、形態がしっかりしている分、窒息リスクも高いです。
少しの変化、老嚥に早期に気づき、早期に形態を調整するなど、対応することが大切です」
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2.摂食嚥下障害にアプローチするときは、嚥下機能だけではなく、全身的な包括的アセスメントが必要
・低下した機能については、その状態の維持、改善に努めつつリスクを最低限にした食べるアプローチが必要
・小山は口から食べるため、専門職種以外でも評価可能な包括的アセスメント法、KTバランスチャートを考案した

・治療も訓練も、嚥下機能のみを改善するのではなく、人間が口から食べるということを改善するという視点に立って、摂食嚥下リハビリテーションに関わることが最も大切
・ゼリーをスプーンで患者の口に入れるという介助動作も、姿勢の設定、頭位の固定、開眼アシスト、視覚情報の入れ方、スプーンの挿入方法、角度、口唇閉鎖の補助など、多くの高度な技術が必要
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「歩けるようになるために、足だけを評価するわけではないように、嚥下機能も飲み込みだけを見るわけではありません。
一度つまづいたからといって歩行をあきらめないのと同じで、一度誤嚥したからといって、禁食にするのは誤ったアプローチです。
アプローチの幅を増やす為には、STも飲み込みだけでなく、全身を見る必要があり、つまり多職種で協力する必要があるということですよね。
歩行に高次脳機能障害が関わってくるように、嚥下に身体機能も関わる。
医療従事者には、より広い知識が求められていると感じます。」
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3.嚥下障害なのに好きなものはムセずに食べれる?

・1回嚥下量が変化すると無意識に誤嚥しないよう舌骨の運動速度を調整したり、食道入口部の開大、弛緩の時間が変化する等を示唆する報告がある
・1回嚥下量のような物理的変化で運動調整が起こるとすれば、感覚的に食欲を増進させる情報によっても、嚥下運動がスムーズに行うよう無意識に運動パターンの調整をするということもありえる
・好みの味や食物を用いた直接訓練が適切であり、これが食事形態よりも優位である可能性すら否定できない場面に遭遇することがある
・ある症例報告で最初の直接訓練に患者が最も食べたがったキャラメルコーンを用いたと聞いたことがある
「普段の食事はむせるのに好みのおやつを食べているときはむせない。
というケースは意外と経験があるのではないでしょうか。
まだエビデンスは乏しいかもしれませんが、このメカニズムが何か証明できればおもしろいですよね。
あと、普段むせているのに、STが見に行くとムセないというケースをよく見るというか、介護士さんや看護士さんに言われます。笑
これについては、見られていることでいつもより、ゆっくり慎重に食べているからかな?など考えていました。
もしかしたら、見られているという緊張があると、嚥下運動が良くなるとか、そんな実験できたらおもしろいですね!」
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本日の引用は
でした!
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