1、大腿骨近位部骨折のリハビリテーション栄養

1ー1.骨折前から栄養障害、サルコペニア、フレイルを合併していることが多い
「骨折の発症前から、サルコペニアや身体的フレイルに該当する方は少なくないと思います。
つまり栄養障害も合併していることが多いと思います。
ただ運動を進めるのではなく、そもそもの骨折の原因を考え、問題解決することが重要です!」
1ー2.骨折と手術による侵襲や周術期の禁食で、栄養障害が悪化しやすい
・摂食嚥下障害の存在を想定しないなど、周術期での対応を誤ると、誤嚥性肺炎や窒息で致命的となることがある
・致命的とならなくても禁食期間が長くなることで、摂食嚥下機能やADLの最終ゴールが低くなることもある。
「とりあえずの禁食も危険ですが、評価不足によるハイリスクな食事設定も低栄養に繋がります。
まずは安全に栄養摂取できる方法を評価することが、STに求められる役割かと思います。」
1ー3.術後早期からのリハと併用して強化型栄養療法を行うことが推奨される
・死亡率および合併症発症率の低下やADLおよび筋力の改善を目的として勧められる。
・強化型栄養療法の介入方法として、高エネルギー高タンパク質栄養剤の追加による補助栄養療法や、管理栄養士によるカウンセリングや栄養サポートを考慮する。
「やはりリハビリ職の栄養学の知識は重要であると共に、管理栄養士とのこまめなやりとりができる環境は、リハにもかなりプラスになりそうですね」
1ー4.サルコペニアの摂食嚥下障害を認めることがあるため、必ず摂食嚥下機能を評価する
・大腿骨近位部骨折に伴う摂食嚥下障害は、サルコペニアが原因のことが多く、適切に評価して対応すれば骨折前の機能まで回復できることが少なくない。
・すべての大腿骨近位部骨折患者に摂食嚥下障害の存在を疑うことの重要性を改めて強調する。
「整形疾患の場合、STまでオーダーが来ないパターンも少なくない気がします。
整形疾患だから嚥下機能は良好。
と解釈してしまうことで、栄養障害含め様々なリスクに繋がる可能性があります。
サルコペニアによる嚥下障害という概念を更に広めていくのが、大事だとも思います。」
1ー5.転院時にはリハ栄養サマリーなどで、リハ栄養ケアプロセスの連携を行う。
栄養サマリー様式鎌倉保健福祉事務所 食生活・栄養のページです。www.pref.kanagawa.jp
「調べてみたところ、エクセルで印刷可能なページがありました!
神奈川県のHPですね。このようなサマリーが使用されることで、次施設に申し送る際にも、栄養面や嚥下面での情報共有がしやすいですね!」
2、脳卒中のリハ栄養

2ー1.侵襲や摂食嚥下障害などで、低栄養を認めることが少なくない
「嚥下障害と低栄養は切り離せない関係かと思います。
低栄養が嚥下障害を招き、嚥下障害が低栄養を招くという、負のスパイラルもあります。
脳卒中の場合は後者が多いですが、適切な評価をし、安全に栄養が取れる方法までを考えるのがSTの役割かと思います。
栄養が取れなければリハが進まないという視点で考えるとSTの役割は重要と感じます。
ただし、食べるときの姿勢や上肢機能なども食事には関わってきますので、PT、OT、栄養士など他職種で観察できることで、評価の質は上がってくると思います。」
2ー2.急性期に栄養状態が悪いと、生命予後と機能予後が悪い
「急性期から回復期にくる際に、最初の評価のみで嚥下食で申し送られてくる場合があります。
入院当初は症状も変動があり、リスクも考えれば嚥下食というのも分かりますが、たまになぜミキサー食なのか、全粥なのかが分からない方もいます。
すぐに形態UPでき普通に食べられるような方も少なくありません。
とりあえずの嚥下食、たとえば全粥にしても、水分でのかさましがあることを考えると、形態がUPすることでもう少し量を増やせるという方もいると思います。
リスク管理は重要ですが、こまめな評価の必要性と、とりあえずの嚥下食は、栄養状態の目線で考えても、長い目でみたリスクがあると思います。」
2ー3.リハを実施されている急性期の脳血管疾患患者には、強化型栄養療法を行うことが推奨される
・死亡率、感染の合併症を減らし、QOLを向上する目的で行う
・強化型栄養療法の介入方法は、個別栄養管理により患者の状態に応じた投与量、経路を選択した上で、濃厚補助栄養剤や高たんぱく食品、サプリメントの追加などを考慮する。
「世間的にもサプリメントへの抵抗感を持つ方はまだまだ多い印象です。
医療現場でも使用されているという事実が、今後メディアを通じて更に発信されていくと良いですね!
とりあえず自分はSNSで発信します!」
2ー4.過栄養の患者では、適正体重の患者と比較してADLの改善が少ない
「過栄養、いわゆる肥満の状態も対応が必要ということです。
低栄養に目が向けられがちですが、過栄養もADL自立の阻害因子になるということです。
筋肉量を落とさないように減量、カロリーは減らしながらもタンパク質は確保するのが一つの戦略。
減量中のボディビルダーさんたちと似てますね。笑」
2ー5.過栄養の場合、脂肪の異常蓄積を改善することで、ADLのゴールをより高くできることがある
・脂肪の異常蓄積の改善は容易でないが、訓練意欲の高い患者では成功することが多い。
「増量へのアプローチは嚥下機能や食思の問題も関わってきますが、減量へのアプローチはどのあたりがポイントになるのでしょう。
食べたいと思う人に我慢してもらうアプローチであれば、食欲コントロールの指導などが有効なのでしょうか。
間食が欲しくなったら・・・血糖値スパイクを起こさない低GI食品、消化が遅く腹持ちの良い食物繊維が豊富な食べ物、さらに高たんぱく質なソイプロテインをすすめる、良い脂肪がとれるナッツをすすめる・・・など。
ただ我慢して!といわれて難しいのは、自分たちが一番知っていると思うので、食欲コントロールの方法は医療現場でも取り入れてくべきかと思います!」
3、急性疾患(廃用症候群)のリハビリテーション栄養

3ー1.廃用症候群の患者の大半に、低栄養を認める
・栄養改善と同時にリハを行わなければ、効果が出ないどころか逆効果となる可能性がある
「これは常識になりつつありますが、改めてリハビリ職は注意しなければいけない点かと思います。
リハで結果が出ないときに、栄養状態に目を向けるのも重要だと思います。
栄養状態に応じた負荷量の設定になっているか・・・など。
管理栄養士さんがいるなら密な関わりが必要かと思います。」
3ー2.低栄養の原因は侵襲が最も多く、飢餓、悪液質を合併することも少なくない
・安静臥床の期間が長い場合、廃用症候群の程度が重いだけでなく、疾患が重度で侵襲が大きいため栄養状態も悪いことが多い。
「いわゆる廃用といわれる方は、やせている方が多い印象です。
廃用ならどんどんリハをして体力つけて!となりがちですが、筋力や筋肉が付くメカニズムを考えれば、栄養状態は絶対に無視できませんよね。
大げさにいえば、ガリガリでお腹を空かしている人にベンチプレスやらせるような感じです。
逆効果になるので注意です!」
3ー3.リハを実施されている急性疾患患者に対して、強化型栄養療法を行うことが推奨される
・自主的リハに加え強化型リハプログラムの併用が望ましい
「筋トレ業界でも運動×栄養×休養は常にセットです。
なかやまきんにくんも言ってます←」
3ー4.るいそうより軽度肥満の患者で、ADLが改善しやすい可能性がある
・サルコペニアが軽度で廃用症候群になる前の栄養状態が良好であれば、栄養障害も比較的軽度である
「栄養と少し逸れますが、高齢になると味覚が衰え、歯も少なくなり、最終的には甘くてやわらかいものを好む方が多い印象です。
そして食欲も減退していきます。
栄養素も重要ですが、どうしても食欲がわかない方などであれば、好きなものを食べることを最優先にしてよいと思います。
糖質中心となっても、そもそもカロリーがとれなければどんどん痩せてしまうので。
また栄養補助食品を上手く組み合わせて、たりない栄養素など補うことができればベスト。
いいたいことは、痩せるなら少し太っているくらいのほうが将来的には良いので、お年寄りは好きなものを食べて欲しい!+若い人は肥満に繋がりやすいので我慢も大事。
ということです!」
3ー5.適正体重や過栄養でも、栄養障害やサルコペニアを認めることがある
・るいそうを認めない場合も、検査値を含めて栄養状態を評価しなければ単なる廃用症候群と解釈しがちである
「やはり検査値などデータでみることは重要ですね。
体重は重いから蓄えはある。
と思いがちですが、蓋を開けてみると栄養障害・サルコペニアという方は少なくないですよね。
これは意外と見落としがちでは?僕はそうでした。
やはり、いろんな意味でも人は見た目で判断してはいけません。
ということですね!」
4、がんのリハビリテーション栄養

4ー1.食欲低下などによる経口摂取量低下と悪液質のため、低栄養のことが多い
・低栄養や悪液質を有し、ADL低下を認める成人がん患者に対するリハと強化型栄養療法の組合せ効果については、現時点でエビデンスが存在せず特定の推奨を行うことはできない
「やってはいけないということではなく、あくまでエビデンス不足により推奨できないということなので、ケースバイケースにもなるのではと思われます。」
4ー2.末期で喘鳴や浮腫を認める場合には、一日500ml以下の静脈栄養で十分なこともある
・リハビリテーション栄養診療ガイドライン2018年版では、脳血管疾患、大腿骨近位部骨折、急性疾患と異なり、一律一定の推奨はしないというステートメントになっている。
「がんの進行状況にも応じたリハ、栄養管理が必要と考えられます。」
4ー3.成人がん患者へのリハと栄養指導を組み合わせたプログラムは、エビデンスが乏しいため推奨なしである
・ただし患者および家族の意向と症状を勘案し、リハと栄養指導の必要性を個別に判断することが望ましい。
「患者、家族の意向を確認するというのは特に大切なことかと思います。
STとしては、最後の一口までおいしく食べられるようにするための嚥下評価や環境設定が一番の役割かと。
その中で能力の土台となる栄養状態を保つためにはどうするかなど、他職種との強力が大切かと思います。
ただ個人的に栄養成分ばかりをこちらが気にしてしまい、患者さんの食欲がわかないのであれば、最後はおいしいものや好きなものを食べられることが幸せかと。
そして偏ってでも栄養を補給できるということがまず重要なのかなと思います。」
4ー4.臨床現場では、低栄養、サルコペニア、悪液質を認めるがん患者には、リハ栄養を行う
・エビデンスがないからがん患者にリハ栄養ケアプロセスを行わないというのは、好ましくない。
「疾患により注意する点はあるかと思いますが、リハ栄養の目線は常に持っておくべきだと思います。」
4ー5.がん悪液質に対しては、運動による抗炎症作用が有用な可能性がある
・リハ栄養を行わないことを推奨しているのではなく、あくまで推奨なしである。
「かといって何もしないことで、状態悪化が早まるのは間違いないかと思います。
エビデンスが少ないということは結果の出にくさや難しさでもあると思いますが、ケースごとにリハ栄養を考えていくのは、どんな疾患の方であっても必要かと思います。」
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