認知行動療法はその名の通り学習理論に基づく行動療法と、情報処理理論に基づく認知療法が理論的背景にあります。
1、行動療法

・レスポンデント条件付けやオペラント条件付けなどの学習理論に基づいて、不適応行動の消去と、適応行動の学習を目指すアプローチ
・レスポンデント条件付けを利用した理論の代表として系統的脱感作法がある
・系統的脱感作法とは、主に不安や恐怖の治療を目的とし、ウォルピが開発した行動療法の一種
【系統的脱感作法】
①面接や恐怖調査票などにより、不安を起こす刺激を特定。
②不安の強さに応じて刺激を並べた「不安階層表」を作成。
③クライエントに弛緩法(リラクゼーション)を習得させる。
④クライエントに不安階層表の最も弱い段階の刺激をイメージさせる。
⑤クライエントが不安を感じたらイメージを中断し、弛緩法で十分に弛緩させる。
⑥十分に弛緩したら、再度同じ刺激をイメージさせ、また不安になったらそこで中断して再度弛緩させる。この手続きがレスポンデント条件付けであり、不安を生じさせる刺激と弛緩を条件付けることを目指す。
⑦⑥を繰り返し、その刺激に対する不安を克服できたら、次の段階の刺激に進む。
⑧そして、最終的には最も強く不安を喚起させる刺激をイメージし、そのイメージ下でも不安を克服できる状態を目指す。
要するに、特定の刺激に対して恐怖反応が発生する場合、恐怖反応と拮抗する弛緩反応を引き起こす刺激を対提示することにより、逆制止の原理によって恐怖反応を打ち消すことを目指すのが系統的脱感作法です。
【暴露反応妨害法(ERP)】
・強迫症に対する行動療法
・ ERPは暴露法と反応妨害法を組み合わせた技法で、レスポンデント反応、オペラント反応の両面から不適応反応の消去を目指すことができる。洗浄脅迫は様々なものを条件刺激とし、不潔と言う不快感情が条件反応として生じており(レスポンデント条件付け)、その不快を消すことを目的とした洗浄行為が強化されている(オペラント条件付け)。 これらの不快感情と洗浄行為をいずれも消去することを目指すのがERPである。
・具体的には、まず不快感情を発生させる刺激に触れさせる暴露法を行う。これはレスポンデント条件付けの消去手続に該当する。同時に、触れたその手の洗浄行為をさせない反応妨害法を行う。これは洗浄行為をしなくても不快な結果が随伴しないことを経験させるオペラント条件付けの手続きである。 これを繰り返すことで、ものに触れる不快感、洗浄と言う脅迫行為のいずれも消去される。
*実際には薬物療法(SSRI=選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や認知療法を併用することも多い。
公認心理師第1回 問151出題
・トークンエコノミー法: 適応的行動の生起時にトークン(二次強化子)を与え、それをある程度貯めることで、本人が欲しがるもの(一次強化子)を得ることができるようにする。これは正の強化による行動療法
・タイムアウト法: 不適応的行動の生起時に行動制限する(部屋の隅に置いた椅子に座らせるなど)ことにより、正の強化子を除去する負の罰による行動療法
・レスポンスコスト法: 不適応行動の生起時に、事前に決めたトークン(お小遣い等)の支給を停止すると言う、負の罰による行動療法。
ちなみに似た用語として行動実験というのがあります。行動実験は非合理的・強迫的な思考に基づいて不安や恐怖が発生している行動を試行してもらうことにより、その思考の妥当性を否定する技法です。
2、認知療法

・1960年代にベックが開発した心理療法
・ベックは認知療法の中でも瞬間的に頭をよぎる思考やイメージを自動思考とよび、セラピストはクライエントと自動思考の妥当性を検討し、適応的な思考に修正できるよう働きかける
・クライエントが自身の自動思考の検討を行い、自動思考以外の考えを持つことができるようになることを、認知再構成という。
例えば、下記のような思考記録表を用います
状況 | 授業中に立って質問に答える |
感情 | 不安70%・悲しみ30% |
自動思考・イメージ | みんなが自分をばかにしている |
根拠 | 先生が答えを正しいと言わず、みんなが自分をみていた |
反証 | 先生が「そういう考えもある」と言っていたから間違いではない 自分が発言すれば、みんなが自分をみても不思議ではない |
自動思考に代わる思考 | 全が自分をばかにしていたということはない |
結果・感情 | 不安60%・悲しみ25% |
要するに、「非合理的信念を変容させる方法」です。
3、認知行動療法

・ 認知行動療法とはケースフォーミュレーションを用いてアセスメントを行い、行動療法や認知療法の様々な技法を用いて介入していくアプローチの総称。
・ ケースフォーミュレーションとは、クライエントの問題の成り立ちを説明する仮説を生成する作業です。
・ 具体的には、クライエントに質問をしながら、問題状況に対する反応を「認知」「感情」「身体」「行動」の4つに分けて整理していきます
・ 得た情報はセラピストだけが把握するのではなく、図示してクライエント自身でも理解できるようにすることが重要。
・ クライエントにとっては、自分自身の問題を理解する心理教育の役割を果たしています。
例 【提出しようとしたレポートを読み直す】
認知:上手く書けていない・バカにされる・怒られる
身体反応:体が硬くなる
行動:レポートを提出せずカバンに戻してしまう
感情:落ち込み・不安
・ 認知行動療法では、この悪循環を把握した上で、認知療法、行動療法の技法を用いて4つの反応のいずれかを変化させることで、悪循環からの脱却を目指す。
・ 例えば認知なら認知再構成法、感情ならばエクスポージャー、行動ならば行動活性化、身体ならばマインドフルネスなど、行動療法、認知療法の技法の中でも、研究によって効果が実証された技法を選択
・選択された技法は面接場面だけでなく、ホームワークという形で自分自身の生活でも実践し、最終的にはセルフケアができる状態を目指す。
・上記のようなクライエントとセラピストの情報共有や共同作業、そしてエビデンスに裏付けられた介入技法を選択する認知行動療法の基本姿勢を協同的実証主義という
・認知行動療法はうつ病治療のための心理療法の中で最も標準的な選択である。自己や環境、将来に対するネガティブな自動思考を断ち切ることで気分の軽快を目指すため、自己の客観視が必要で、重症患者には向かないが、軽症・中等症の患者には効果が高い。またプロセスが構造的なので短期的な効果も見込める
・ソクラテス式問答(誘導による発見): 質問を繰り返すことによって、クライエントが自身の自動思考や認知的な偏りを自ら発見できるように促す対話法で、認知行動療法の一環として用いることが多い。
4、まとめ

1、行動療法とはレスポンデント条件付けやオペラント条件付けなどの学習理論に基づいて、不適応行動の消去と、適応行動の学習を目指すアプローチ
2、認知療法の中でも、瞬間的に頭をよぎる思考やイメージを自動思考とよび、クライエントが自身の自動思考の検討を行い、自動思考以外の考えを持つことができるようになることを、認知再構成という。
3、認知行動療法とは、ケースフォーミュレーションを用いてアセスメントを行い、行動療法や認知療法の様々な技法を用いて介入していくアプローチの総称
・この記事は赤本 公認心理師国試対策2022 (KS心理学専門書) を用いて要約しています。
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