オーラルフレイル・老嚥・口腔機能低下症という用語の違いがよく分からないという方へ

老化と摂食嚥下障害「口から食べる」を多職種で支えるための視点

【まとめ】

◎オーラルフレイル、老嚥、口腔機能低下症などの概念自体が視点や範囲が異なり、診断基準も明確でないため、グレーゾーンの幅が大きく混乱する

オーラルフレイルは、口の機能低下、食べる機能の障がい、さら
には心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対し
て警鐘を鳴らした概念です(2019年頃~現在の考え方

出典:通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル 2020年版/概要リーフレット|オーラルフレイル|日本歯科医師会 (jda.or.jp)

出典:2020-Leaflet.pdf (jda.or.jp)

オーラルフレイル図で考えるなら、段階順にいくと

第2段階:オーラルフレイル(*2016年頃までの考え方・今は上記の定義で用いられる

第2・3段階:老嚥

第3段階:口腔機能低下症

◎それぞれの用語の概念構築や診断が確立するのは大事だが、対応方法と効果が国民にとってわかりやすく明確になることも重要

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以前の記事で、【オーラルフレイル、オーラルサルコペニア、口腔機能低下症・・・説明できる?】という題でまとめました。

オーラルフレイル、オーラルサルコペニア、口腔機能低下症・・・説明できる?
1.オーラルフレイルとは・柏スタディの報告では、要介護や病気になる手前の段階である全身のフレイルのうち、14%が口腔の崩壊から始まるとされている・口腔の崩壊が原因となって、身体性、精神性、社会性も衰えていって身体的フレイルにいたる...

今回は未だに混乱しやすい、オーラルフレイル老嚥口腔機能低下症というそれぞれの用語の使い方・違いについてまとめました!

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1.オーラルフレイルとは軽度の口腔機能低下

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ページが見つかりませんでした – サクラ歯科医院

より画像引用

・フレイルとは健康と病気の中間的な虚弱な高齢像を、社会的、身体的、精神的な総合的な視点から示す言葉

・フレイルは、適切な介入によって健康な状態へ戻ることができる状態

・フレイルは①社会性/心のフレイル期②栄養面のフレイル期③身体面のフレイル期④重度のフレイル期の4つの段階に分けて説明されている

・第2段階の栄養面のフレイル期にみられる滑舌低下、食べこぼしがある、わずかなムセがある、かめない食品が増えてきたなどの軽度な口腔機能低下をオーラルフレイルとしている(少し前の考え方)

⇒現在は・・・

オーラルフレイルは、口の機能低下、食べる機能の障がい、さら
には心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対し
て警鐘を鳴らした概念です(現在の考え方

出典:通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル 2020年版/概要リーフレット|オーラルフレイル|日本歯科医師会 (jda.or.jp)

出典:2020-Leaflet.pdf (jda.or.jp)

・オーラルフレイルに対して介入や予防を行うことがフレイルの重症化を防ぐことに繋がる

「オーラルフレイルについても以前に少し詳しくまとめているので、復習したい方はご覧ください

オーラルフレイルとは?ポイント4つ
1.口に関する些細な衰えをそのままにしてしまうと、口の機能低下から食べる機能の障害、さらには心身の機能低下までつながる負の連鎖が生じてしまうことについて警鐘を鳴らした概念ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...

つまりオーラルフレイルは・・・

第2段階の栄養面のフレイル期にみられる滑舌低下、食べこぼしがある、わずかなムセがある、かめない食品が増えてきたなどの軽度な口腔機能低下!という考え方でしたが、現在は・・・

4つのレベルから構成され、右に進むほど重度化する。レベル別に様々な制度などで対応されておりその重度化に伴い、特に身体的フレイルに対する影響度が増大する概念

ということができるわけで、特徴としては・・・

フレイルという社会的、身体的、精神的な総合的な視点から示す言葉

を使用しているので、オーラルフレイルを食い止めることが、社会的・身体的・精神的全てのフレイルを予防することに繋がるということ!

オーラルフレイルという言葉自体は口腔に特化した言葉ですが、社会性・身体面・精神面全てに繋がるということを強調した言葉と理解してよいと思います。

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2.老嚥とは老化による嚥下機能低下のこと

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松下 ER ランチ・カンファレンス
松下記念病院 救急 ER カンファレンス 総合内科

より画像引用

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Interview オピニオンを聞く 西尾 正輝 氏
Geriatric Medicine Vol.55 No.3 2017-3 第10回 フレイル・サルコペニアと摂食嚥下リハビリテーション:あらたなる挑戦(評価編)    健康寿命の延伸につながる包括的な嚥下運動機能検査 AMFD~期待される

より画像引用

障害には至っていない、機能低下の状態

・老嚥というのは、摂食嚥下障害の手前の、嚥下のフレイル的な位置づけ

・老嚥は食形態の制限はほとんど必要なく通常の食事は可能

・老嚥は餅やパン、厚い肉など咀嚼嚥下運動に大きな負担となる食形態や、水分と固形物の混在した二相性食品などでは誤嚥リスクが高くなったり、スムーズな咀嚼嚥下運動ができなくなるような状態

・要介護の状態が摂食嚥下障害、自立と要介護の間にあるのが老嚥

「老嚥についても以前まとめているので、詳しく知りたい方は以下のリンクからご覧ください。

老嚥って何?介護現場が抱える摂食嚥下機能低下の問題です
本日の引用はです!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー【老嚥とは老化による嚥下機能低下のこと】・障害には至っていない、機能低下の状態・健常高齢者でも3-5割の人は誤嚥しているという報告もい...
老嚥とKTバランスチャートのこと+好き嫌いが嚥下機能に関わる?
1.老嚥とは老人性嚥下機能低下を表す概念・高齢者の中には障害には至らない嚥下機能低下状態が多くみられる・これらにはサルコペニアが関連していると考えられ、進行することにより摂食嚥下障害に至ると考えられる・老嚥は食形態の制限はほとんど...

つまり老嚥は、オーラルフレイルの概念図でいうと、第2・3段階あたりことを指すと考えて良いと思います。

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ただし、オーラルフレイルと比較すると、より嚥下のみに特化した言葉だと思います。

使い分けのイメージとしては、介護予防事業などでは、生活全体の予防に繋がるように、オーラルフレイルが言いと思います。

嚥下に特化した意見を求められる場面や専門職が多い場面(病院や施設での評価結果報告など)では老嚥という言葉が分かりやすいのかなーというイメージですね!」

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3.口腔機能低下症は口腔に視点をおき、摂食嚥下障害や咀嚼障害に至る前段階

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40代から食べる力が衰える?(口腔機能低下症) | 西辻歯科医院
1月29日(水)NHK おはよう日本で「40代から衰える⁉“食べる力”」と題し、口腔機能低下症について紹介されました。口腔機能低下症とは?口腔機能低下症とは文字通り、お口の機能が低下する状態をさします。

より画像引用

オーラルフレイルの次の段階という位置づけ(*2016年頃まで・上の図は学会見解論文2016年度版の老化による口腔機能低下を表したもの

「口腔機能低下症は、オーラルフレイル図でいうなら第3段階と考えてよいと思います。

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ですが、この口腔機能低下症という用語の良い点は、診断基準がはっきりしているという点だと思います。

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高齢者の歯科領域で新疾患概念|ガイドライン・診断基準|その他診療領域_高齢者|医療ニュース|Medical Tribune
 日本老年歯科医学会は、歯科領域における高齢期の疾患として『口腔機能低下症』の概念と診断基準をまとめ、11月22日に公表した。新たな病名を用いることで、う蝕や歯の欠損に対する治療だけでなく、咀嚼や嚥下を含めた口腔機能の低下に対して早期に介入

より画像引用

オーラルフレイルや老嚥は、明確な診断基準がないので、口腔機能低下症の強みというか、分かりやすさはその点かなと思います。

そして、この段階の方々は、歯科診療所での対応!と明記しています。

口腔機能低下症は歯科業界から出た用語であり、オーラルフレイルや老嚥はおそらく違う業界から出た用語ので、似た言葉が重複しちゃってるイメージですかね。

マクドナルドをマックというのか、マクドというのか。極端に例えるなら、そんな違いでしょうか?

正直、どんな用語でも良いので、国民に分かりやすく、専門職にも使いやすい用語であれば良いなーと思います。

話は逸れますが、地域ケア会議では、歯科衛生士さんも嚥下面の意見を出すので、言語聴覚士は嚥下面を言おうとしているとかぶるという話を聞いたことがあります。笑

自分達の専門性や職域は守りつつも、協力し合って予防医療ができれば良いなーと思います!

言語聴覚士としても、歯科衛生士さんはかなり頼りになるので、嚥下面のプロッフェショナルとして、言語聴覚士もがんばっていかないとですね。」

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【まとめ】

◎オーラルフレイル、老嚥、口腔機能低下症などの概念自体が視点や範囲が異なり、診断基準も明確でないため、グレーゾーンの幅が大きく混乱する

オーラルフレイルは、口の機能低下、食べる機能の障がい、さら
には心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対し
て警鐘を鳴らした概念です(2019年~現在の考え方

出典:通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル 2020年版/概要リーフレット|オーラルフレイル|日本歯科医師会 (jda.or.jp)

出典:2020-Leaflet.pdf (jda.or.jp)

オーラルフレイル図で考えるなら、段階順にいくと

第2段階:オーラルフレイル*2016年頃までの考え方・現在は上記の考え方となっている

第2・3段階:老嚥

第3段階:口腔機能低下症

◎それぞれの用語の概念構築や診断が確立するのは大事だが、対応方法と効果が国民にとってわかりやすく明確になることも重要

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本日の引用は

https://amzn.to/3vny23V

でした!

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